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飯倉章のヴァーチャル研究室
城西国際大学国際人文学部(国際交流学科)教授 ときどき更新

「諷刺画の問題と楽しみ方」
千葉テレビ放送ニュース番組「NEWSチバ930」(2011年5月25日午後9時30分~55分)「ニュースな言葉」コーナーより
*「ニュースな言葉」で専門の諷刺画をめぐる話題について話させていただきました。当日のニュースについてのコメントはこちらからどうぞ。

( )内は谷岡アナです。
1.風評被害を煽る諷刺画
(飯倉さんは諷刺画の研究をなさっているそうですが、今回の大震災後に風評被害を煽るような諷刺画が海外で掲載されていましたね)
そうですね。これがそれですね〔諷刺画①〕。外国の新聞に載ったものなんですけども。
(どういった内容でしょうか)
こちらはグリム童話に出てくる白雪姫ですね。童話では毒りんごを食べて亡くなりますけども、この画(え)ではリンゴに「ちょっと待って。あなたは日本から来たの?」と聞いて、日本産だから放射能があるのではないかと疑っているんですね。まあ、こうやって笑いを誘っているのですが、笑えますかねぇ?
(日本人としては笑えないですね)
そうでしょうね。風評被害を煽るような内容ですね。抗議を受けて、新聞社も謝罪しています。
(ということで今夜の「ニュースな言葉」は風評被害でも話題になりました諷刺画を取り上げます)

2.諷刺画とは?
(そもそも諷刺画というのは、どういうものでしょうか?)
諷刺自体が一言で言えば、ユーモアを込めて遠まわしに批判することなんですね。
諷刺にはちょっとした毒があって、そのために誰かを傷つけてしまうようなこともあります。ただ、毒があるから面白いんですね。毒がユーモアになっている場合もあります。
諷刺画の場合には作者が、いろいろと笑わせようと工夫を凝らしています。
(なるほど。日本でも明治・大正・昭和時代には多くの諷刺画が残っていますよね)
そうですね。それと日本自体が色々と描かれています。今から百年ほど前の日露戦争では、世界中の百余り、いやそれ以上の新聞や雑誌で、日本に関する、あるいはロシアに関する諷刺画が出されました。その幾つかを今日はご紹介したいと思っているんですけども…。

3.日露戦争期の諷刺画
(まずはこちらですね〔諷刺画②〕。これは人が熊を抱きあげていますけども、どういった意味でしょうか?)図2.jpg

熊はロシアを一般的に指し示します、この時代は。日露戦争が始まりまして、日本軍が奇襲攻撃をするんですが、日本の水兵が熊を持ち上げていて、ロシア熊の方は「準備ができていなかった」ともがいているんですね。そんな慌てぶりを笑ってるわけですけどもね。
(続いてこちらですね〔諷刺画③〕)
図3.jpg


これは、ロシアは負け続けていますので、ロシア陸軍の将軍をハサミは立派ですけど、陸に上がってしまうと行動力が伴わないロブスターに喩えているわけですね。
(なるほど)
図4.jpg
〔諷刺画④〕
また、日本海海戦で敗れたロシアのバルチック艦隊の司令長官は、ご覧のように樽で漂流する姿として描かれています。

図5.jpg
一方、日本の東郷司令長官は、勝利の女神から「バンザイ」と、下に小さく見えると思いますけど「バンザイ」と祝福を受けています。〔諷刺画⑤〕
(なかなか日本とはリンクしないような。諷刺画とも違うような印象でしたけども…)
諷刺画というのは文化的な背景がありますから、その国の文化のなかで諷刺を読み解いて行くということが必要なんですけども…。いろいろとひねりが効いているものもあります。
たとえばこの画〔諷刺画⑥〕はドイツのものですが、どう思いますか?
図6.jpg
(これは巨大な人がいて、下で小さな人が足を叩いていますね)
巨人はロシアで足を叩いているのは日本です。一見するとロシアの弱点を突いているように見えるかもしれませんが、ただ説明がありまして、日本に対して、気をつけろと言っています。
(これは気をつけろというサインにはあまり見えないですね)
ええ、ただあまり調子に乗ってやってしまうと、ロシアが倒れて来て、日本も一緒に押しつぶされて共倒れになってしまう。そういう警告も含んでいるんですね。
(こういった幾つもの意味が込められているんですね)
そうですね。そういうところが諷刺画の特徴なんですけども、ある意味では作者との知恵比べということですね。お楽しみいただけましたでしょうか?
(はい、見て楽しむことができましたね)
時代をうまく表現するのが諷刺画なんですけども、テレビもラジオもない時代に大切な情報源でもあった訳ですね。
(なるほど、言われてみるとそうですね)
最後にもう一枚、震災後の諷刺画を紹介したいと思います。これなんですね〔諷刺画⑦〕。日本の領事館が抗議して謝罪があったものですが、見てみてどうですか?
(日の丸にヒビが入っていますね)
そうですね。それがショッキングなんですけれども、ただイラストの左半分だけ見てみてください。そうすると顔のように見えませんか?[放送では右半分と言ってしまいました。すみません!言い訳ですが「右半分をふさいで見ると…」というつもりだったんですが]
(何となく見えますね)
これ嘆いている顔なんですね。
このように諷刺画は見る人によっては不愉快に思わせることもあるかもしれませんが、そこに込められた作り手のセンスを読み解くことによって、その諷刺画の伝えたかったこととか、時代を読み解くことができるのではないかと思います。
最近ではインターネットが発達していますから、こういう諷刺画が瞬時に世界中を回るということもありますので、描く側も描かれる側の心情を配慮して、描く必要があるかもしれませんね。
(諷刺画の背景も変わってきている状況ですね)
そうですね。
(はい、ありがとうございました。今夜は諷刺画についてお伝えしました)

諷刺画の出典
① Luojie, cartoon, rpt. in International Herald Tribune, 21 Apr. 2011, p. 7.〔著作権の問題があるので画像は入れません〕
② E. Linley Sambourne, ‘Catch as Catch Can,’ Punch, or the London Charivari, Vol. 126 (17 Feb. 1904), p. 119. E・リンリー・サンバーン「しゃにむに組みつく」『パンチ、あるいはロンドン・シャリヴァリ』(イギリス)、キャプション:ロシア熊「おい、言ってんだよ。持ち上げやめ! 準備ができてなかった!」(『日露戦争諷刺画大全』上巻、21頁。写真は原典コピーの切り抜き)
③ ‘Kuropatokin’s Offensive,’ Humoristische Blätter, n.d., rpt. in Literary Digest, Vol. 29, No. 20 (12 Nov. 1904), p. 654.「クロパトキンの攻撃」『フモリスティッシェ・ブレッター』(オーストリア)(『日露戦争諷刺画大全』上巻、286頁。写真は原典コピーの切り抜き)
④ ‘After the Battle,’ Humoristische Blätter, n.d., rpt. in Literary Digest, Vol. 31, No. 1 (1 July 1905), p. 21. 「戦いの後」『フモリスティッシェ・ブレッター』(オーストリア)、キャプション:[ロジェストウェンスキー]「すべては失われた。私が受けるであろう勲章以外は」(『日露戦争諷刺画大全』下巻、46頁。写真は原典コピーの切り抜き)
⑤ E. Linley Sambourne, ‘“Banzai!”,’ Punch, or the London Charivari, Vol. 128 (7 June 1905), p. 407. E・リンリー・サンバーン「バンザイ!」『パンチ、あるいはロンドン・シャリヴァリ』(イギリス)(『日露戦争諷刺画大全』下巻、37頁。写真は原典コピーの切り抜き)
⑥ ‘The Colossus with the Feet of Clay,’ Simplicissimus, n.d., rpt. in Review of Reviews, Vol. 29 (June 1904), p. 571. 「粘土の足の巨像」『ジンプリツィシムス』誌(ドイツ)、キャプション:「日本よ、気をつけろよ! もう片方の足を壊したら、お前の上に倒れてきてつぶされるぞ」
⑦ Cover, ‘Crisis in Japan,’ Bloomberg Businessweek, 21 Mar. 2011.〔著作権の問題があるので画像は入れません〕

付記:諷刺画⑦は日の丸を扱っているので、失礼と感じる方も多いかもしれません。ただ諷刺画①と比べれば、それほど悪意はないかなとも思います。

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